2024年1月5日金曜日

▶仏教説話「三尺三寸箸」と会社経営

© Chris Madden(Please go ahead!)


昔、ある男が老師に尋ねました。「地獄と極楽はどんなところでしょうか?」

老師が語るには、地獄と極楽には同じように大きな釜があり、そこには同じようにおいしそうな、うどんがぐつぐつと煮えている。ところが、そのうどんを食べるのが、ひと苦労で長さが1メートル(三尺三寸)ほどの長い箸を使うしかないのです。

地獄に住んでいる人はみな、われ先にうどんを食べようと、争って箸を釜につっ込んで、うどんをつかもうとしますが、あまりに箸が長く、うまく口まで運べません。しまいには他人がつかんだ、うどんを無理やり奪おうと争い、ケンカになって、うどんは飛び散り、だれ一人として目の前のうどんを口にすることはできないのです。おいしそうな、うどんを目の前にしながら、だれもが飢えてやせ衰えている。それが地獄の光景だというのです。

それに対して極楽では、同じうどんを前にして、まったく違う光景が繰り広げられています。だれもが自分の長い箸で、うどんをつかむと、釜の向こう側にいる人の口へと運び、「あなたからお先にどうぞ」と食べさせてあげる。そうやってうどんを食べた人も、「ありがとう。次はあなたの番です」と、お返しに、うどんを取ってあげます。ですから極楽では全員がおだやかに、うどんを食べることができ、満ち足りた心になれるのです。

「同じような世界に住んでいても、あたたかい思いやりの心を持てるかどうかで、そこが極楽にも地獄にもなるのです」それを言い残して老師は去っていきました。

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この話は、京セラやKDDIを立ち上げ、JALを再生させた稲盛和夫さんの「生き方」という本に出ていました。これがまさに「利他の心」だと思います。自分のことだけでなく、ひとを思いやる心、大切なことだなと思いました。利他とは、他人のために何かをするということ。稲盛さんは、会社の利益のためだけでなく「世のため、人のため」という思いやりの気持ちをもって会社経営をしてきたとおっしゃっていました。さすがですね。(廣瀬)

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